地方自治法第117条の「除斥」

地方自治法第117条は、地方公共団体における行政手続きに関する重要な規定の一つであり、「除斥」という概念を定めています。この規定は、行政機関の判断や決定が適切でない場合や、関係者が不正に関与することを防ぐために設けられたものです。

1. 「除斥」とは何か?

まず「除斥」という言葉ですが、これは「除外」や「排除」といった意味を持ちます。具体的には、地方自治法第117条は、行政機関の職員や地方公共団体の関係者が、特定の事案に関して利害関係がある場合に、その関係者がその行政手続きから除外されることを定めています。これにより、公正な判断を行うための環境が整えられます。

例えば、ある地方自治体が契約を結ぶ際、その契約に関わる職員や役人が自己の利益を追求して不正に関与しないようにするため、利害関係者がその手続きに関わらないようにするのが「除斥」の目的です。

2. 地方自治法第117条の内容

地方自治法第117条は、以下のような内容です:

第117条 地方公共団体の議会の議員又はその関係者が、その議案の審議に関与することを排除することを定める。

この条文は、地方公共団体の議員やその関係者が特定の議案に関わる場合、その議案の審議に参加してはならないことを意味します。特に、議員がその案件に直接的な利益を得る立場にある場合、その議案から除外されるというルールです。これにより、公共の利益を優先し、公正な判断がなされるよう保障しています。

3. 除斥規定の目的

除斥規定が設けられている主な目的は、公正な行政運営を確保することです。行政の透明性を高め、職員や議員が自己の利益を優先することを防ぐため、特定の事案に対して利害関係がある場合はその当事者が行政手続きから除外されることで、利益相反を避けることができます。

特に、地方公共団体が行う事業や契約、予算の決定などでは、その決定が公正に行われることが非常に重要です。もし、関係者がその案件から利益を得る立場にあれば、その人がその決定に関与すること自体が不公平な結果を生む可能性があります。除斥規定は、このような不正を防ぐために不可欠な制度です。

4. 除斥の適用例

除斥の適用例としては、次のようなケースが考えられます。

契約に関する決定:地方自治体が企業と契約を結ぶ際、その契約に関連する地方議会の議員が、契約内容に利害関係がある場合、その議員はその契約に関する審議から除外されます。

予算決定:地方自治体の予算編成において、特定の予算案が議員や役人の利益に直結する場合、その関係者はその予算案の審議に参加できません。

選挙管理:選挙において、公正さを確保するために、選挙に直接的な利害関係がある者が選挙管理に関与することを排除する場合もあります。

5. 除斥規定を巡る問題点

地方自治法第117条に基づく「除斥」の適用にはいくつかの問題点もあります。例えば、除斥が厳格に適用されることにより、特定の議員や職員が重要な行政手続きから排除される場合、その手続きの進行に支障が生じる可能性もあります。また、除斥の適用が適切に行われない場合、不公正な判断がなされるリスクもあります。


地方自治法第117条の「除斥」規定は、地方公共団体の行政手続きにおいて利害関係者が不正に関与することを防ぐための重要な仕組みです。これにより、地方自治体の業務が公正かつ透明に行われ、市民の信頼を保つことができます。しかし、適用には慎重を要する部分もあるため、十分な理解と適正な運用が求められます。


では昨日のニュースで報じられていた岸和田市の事例について具体的に考えてみます。

岸和田市長再度の不信任決議と市長の妻である市議の除斥

2025年2月17日、岸和田市の市長に対する再度の不信任決議が市議会で審議されました。この決議では、岸和田市長に対する不信任を問う議案が提出され、議会内で激しい議論が繰り広げられました。しかし、この決議の中で注目すべき点は、市長の妻である市議が裁決に参加できなかったという事実です。この状況は、地方自治法第117条に基づく「除斥」規定に関連しています。

1. 市長の妻である市議の立場

市長の妻である市議がこの決議に参加できなかった理由は、地方自治法第117条の「除斥」規定にあります。地方自治法第117条は、地方議会の議員がその議案に関して直接的な利害関係を持つ場合、その議案の審議や採決に参加できないことを定めています。この場合、議員自身やその親族が議案に利益を得る立場にあると、公正な判断が損なわれる恐れがあるためです。

市長の妻である市議は、議案に対して直接的な利害関係を持っていると見なされます。市長の不信任決議に関して、もし妻である市議がその決議に賛成または反対することによって市長との関係に影響を及ぼす可能性があるため、このような利益相反を避けるためにその議員は裁決から除外されることが求められます。

2. 地方自治法第117条の「除斥」規定

地方自治法第117条は、地方議会の議員が自らや親族に対して利益相反が生じる場合、その決議に参加することを除外するための規定です。この規定は、議会の決定が公正かつ公平に行われ、市民の信頼を損なうことがないようにするために設けられています。市長の妻である市議が不信任決議に参加することは、議決の公正性に疑念を抱かせる恐れがあるため、除斥規定が適用されたのです。

今回の事例では、岸和田市の議会において市長に対する不信任決議が再度提出されたことから、議会の議員の中で市長と親しい関係を持つ市議がその決議に参加することの是非が問題となり、市長の妻である市議が除斥される形となりました。このような除斥規定は、行政の透明性と公正性を守るために非常に重要な役割を果たします。

3. 市民の信頼と公平な議会運営

市長不信任決議のような重要な議案において、議員がその利害関係に左右されず、公正な判断を下すことが求められます。市長の妻である市議が決議に参加することによって、公平性が疑問視されるリスクがあったため、除斥規定が適用され、彼女の参加が制限されたことは、市民からの信頼を保つために必要な措置と言えるでしょう。

仮に、市長の妻である市議が裁決に参加していた場合、その決議が公正であるという信頼が損なわれ、市民からの疑念を招く可能性が高いです。議会の透明性を確保し、適切な判断を下すためには、このような利益相反を避けることが不可欠です。


岸和田市の市長に対する再度の不信任決議において、市長の妻である市議が決議に参加できなかったことは、地方自治法第117条の「除斥」規定が適切に適用された一例です。この規定は、議会の決定が公平で公正であることを確保するために存在しています。市長の妻が議決に参加しないことで、議会の決定は透明で信頼性が高く、市民に対する誠実さが示されました。

このように、地方自治法第117条の除斥規定が正しく運用されることにより、議会は公正な意思決定を行い、市民の信頼を得ることができるのです。


喜多行政書士事務所

香川県の西の端 観音寺市の行政書士事務所です 許認可申請 書類作成 各種手続などの基本業務のほか FPとして資産設計提案業務もしております 困った顔が笑顔になり大きな喜びとなるようにをモットーに 小さい事務所ではありますが日々研鑽しながら頑張ってます どうぞお気軽にご問い合わせください

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