共用部の維持管理は誰の責任?

~中国人オーナー物件で浮き彫りになったトラブルから考える~

近年、外国人オーナーによる日本国内の集合賃貸住宅の運用が増加する中で、ルールやマナーを軽視した管理・運用が問題となるケースが目立ってきました。

先日も、ある中国人オーナーが所有する集合賃貸住宅において「共用部の光熱費未払いによる停止」「ケーブルテレビの契約打ち切り」といった深刻なトラブルが発生しているという報道がありました。


問題の概要

この物件では、以前からさまざまな問題が指摘されていました。

・家賃を大幅に引き上げ、実質的な強制退去を狙った疑惑

・オーナーの無許可民泊運営

・今回明らかになった共用部の光熱費やケーブルテレビの未払い

共益費をきちんと毎月納めている入居者がいるにも関わらず、エレベーターや廊下の照明が停止状態、今後はエレベーターそのものが止まる恐れすらあるとのことです。

このような状況下で、借主(入居者)はどのように対応すればよいのか。また、そもそもこうした事態を防ぐには、オーナー(貸主)側にどのような責任があるのか。賃貸不動産経営管理士の視点から解説します。


共用部の維持管理責任は誰にある?

賃貸住宅において、「共用部の維持管理責任」は基本的に貸主(オーナー)側にあります。これは建物の安全性・快適性・資産価値の維持に直結する重要な管理業務です。

入居者が毎月支払っている「共益費」は、この共用部の維持管理費(電気代、清掃費、設備保守、ケーブルTVなど)に充てられるべき費用であり、当然ながら適切に使われる義務があります。

したがって、貸主が共益費を徴収しておきながら、それを目的に沿って使用していない(=電気代やサービスの支払いを怠っている)場合、それは契約違反にあたる可能性が極めて高いです。


賃貸不動産経営管理士の視点:法的・実務的な問題点

1. 信義則違反・契約不履行の恐れ

借主は、契約に基づいて共益費を支払い、その対価として「安全で快適な共用部の利用」を当然に期待しています。それにもかかわらず、オーナーが光熱費等を支払わず、サービスが停止しているのであれば、これは明らかに信義則違反。または民法上の契約不履行と見なされる可能性があります。

2. 安全配慮義務の放棄

廊下や階段の照明が消えていたり、エレベーターが止まっていたりすれば、転倒事故や閉じ込め事故などのリスクが高まります。これは「貸主の安全配慮義務の怠慢」として、万が一の事故の際には損害賠償責任を問われる可能性もあります。

3. 賃借人の信頼損失と退去リスク

このような管理不全は、物件全体の信頼性を損ない、借主の不安や不満を増大させ、空室リスクを高める要因になります。一時的な民泊収益などに目を奪われ、長期安定運用の本質を見失っている典型例といえるでしょう。


借主(入居者)はどう対応すべきか?

1.まずは証拠を残す(写真・動画・日記)

 共用部の状況(照明がついていない、エレベーター停止など)を撮影・記録しておきましょう。

2.貸主や管理会社に文書で問い合わせる

 口頭ではなく、書面またはメールで正式に「共用部の維持管理がなされていない旨」「共益費の使途の説明を求める内容」を通知するのが効果的です。

3.役所の住宅課や消費生活センターへ相談

 民間紛争であるため行政の介入には限界がありますが、第三者機関からの指導が有効に働くケースもあります。

4.弁護士・専門家への相談も視野に

 状況が改善されない場合、家賃減額請求や契約解除など、法的手続きをとる準備も検討すべきです。


管理不全物件をなくすために:制度面での課題も

今回のように、管理不全による入居者被害が繰り返される背景には、以下のような制度上の課題もあります。

・オーナーが外国人である場合、言語や法律知識の壁がある

管理委託契約をしていないケースも多く、管理責任が曖昧

・現行法では、貸主による共益費の不正使用に対する制裁が限定的

将来的には、管理義務違反に対する行政指導や罰則強化、共益費の透明性を義務化するような法制度の整備も求められます。


最後に:不動産経営は「信頼」の上に成り立つ

不動産賃貸業は、単に物件を貸し出して利益を得るだけのビジネスではありません。長期的な信頼関係と、適切な維持管理によって初めて成り立つ社会的な事業です。

今回のような事例が「一部の悪質なオーナーによる例外」であることを願うとともに、すべてのオーナーに対して「自らの責任と役割」を今一度見つめ直してほしいと強く感じます。

喜多行政書士事務所

香川県の西の端 観音寺市の行政書士事務所です 許認可申請 書類作成 各種手続などの基本業務のほか FPとして資産設計提案業務もしております 困った顔が笑顔になり大きな喜びとなるようにをモットーに 小さい事務所ではありますが日々研鑽しながら頑張ってます どうぞお気軽にご問い合わせください

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