「日本企業に問われる“意識”と“仕組み” — ガバナンス強化の今」
日本企業のガバナンス(企業統治)が揺らいでいるように感じられます。日本郵便の個人情報流出・保険販売不正、サントリーのCEO薬物疑惑、JALの機長の飲酒問題。これらは単なる“個別の不祥事”ではなく、「ガバナンスに対する意識の低さ」や「仕組みの脆弱さ」を浮き彫りにしています。今回は誰にでも伝わる表現で、多角的にその構造的要因とこれからの方向性を考えてみましょう。
1. なぜ今、「ガバナンス」がみんなの関心事に?
・信頼の崩壊は、企業の命取り。 ガバナンスの不備は顧客、投資家、社員、社会全体の信頼を失うリスク。
・日本でも法改正や東証ルールの変更で、説明責任・透明性や社外取締役の導入など、国際水準への対応が進んでいます。
2. 日本郵便に見る構造的課題
・主な問題点:顧客10万人分の個人情報漏洩や保険販売での不正行為、配達員の健康チェック記録の偽装など複数事件が発覚した背景には、組織文化の緩みと監督体制の弱さが存在します。
・対応の現状:経営責任を問われ、役員報酬が一時的に削減されたほか、グループCRO設置やリスク管理の強化、社外取締役の比率向上を進めています。
・ポイント:制度を作っても文化や組織の根本に踏み込まなければ、根付きません。「透明性」と「実効性」の両輪が不可欠です。
3. サントリーCEOの辞任に見る「意識と実効」のギャップ
・事実の確認:2025年9月1日、サントリーのCEO・新出毅氏は、米国から送られたサプリに違法成分(THC)が含まれていた恐れから捜査対象となり、取締役会が辞任を承認しました。本人は「無罪」を主張しています。
・ガバナンスの問題点:業界の顔として知られた経営トップが、会社と同じ製品群に対して十分な注意を払わず、リスクを招いたことは、ガバナンスの観点から重大な誤算だったと言えます。
・制度面での課題:トップ層が“家族や伝統主義”の延長で選ばれやすい日本企業では、外部視点やチェックの機能が弱まる傾向があります。構造改革と組織文化の刷新が不可避です。
4. JALに見る「安全文化とガバナンスの対話」
① 繰り返される“飲酒”問題、その背景とは
・最近の事例:2025年8月、ホノルル滞在中のJAL機長が「前日の飲酒」で体調を崩し欠勤を申告。その結果、便の大幅な遅延が発生し、約630名の乗客に影響が出ました。国土交通省による調査が進行中です。
・昨年末の事例:2024年12月、メルボルン発の便でパイロット2名が残酒チェックで飲酒超過と判明し、3時間の遅延。これを受け、JALは社長と会長が2ヶ月間、報酬を30%カットされました。
・他にも指摘:2025年2月には、飲酒の発覚後に嘘をついたとして2名の元パイロットが最大7ヶ月の免許停止処分を受けています。
② なぜ繰り返されるのか、ガバナンスの構造的課題
・安全よりも“定時運航重視”になりがち? 歴史的にもJALには「安全より定時性を優先しすぎた」という反省点があり、安全文化醸成が継続課題です。
・社内制度の整備:JALは「腐敗防止体制」に関して、内部通報制度や従業員研修など整備しています。ただし、今回の飲酒問題は「腐敗」以前の、文化や意識の統一の問題とも言えます。
③ ガバナンス体制の形だけではなく文化・意識が鍵
2025年5月時点で、JALの「コーポレートガバナンス基本方針」は整備され、社外取締役や取締役会の見直しも行われています。しかし、それが現場の「日常的な行動」まで反映されていないことが課題です。
④ 明日からできる改善アクション
・飲酒規律をトップがしっかり発信:安全最優先の文化を繰り返し共有し、言葉だけでなく行動で示すこと。
・定期研修+心理的安全の確保:社員が「言いやすい・報告しやすい」職場環境を作る。
・本当に効果があるルールの検証:例えば飲酒検査の頻度やモニタリング体制が職場文化に根付いているかどうかを定期的にチェックする。
5. ガバナンスを強くするために、今できること
①平易な言葉で伝えるなら…
・「透明性を高めるとともに、痛みを恐れず組織を見直す」
・「制度だけでなく、社員全員が日々意識する文化にする」
②具体的アクション
・経営陣だけでなく、全社員向け定期研修・リスク教育を徹底する
・社外取締役や独立監査委員会を充実させ、外部からの視点を活かす
・問題発生時には迅速かつ誠実に情報を公開し、謝罪で信頼回復を目指す
・定期的に内部監査や第三者による評価を受け、制度と運用を見直す
まとめ
「ガバナンス」は堅苦しく見えて、実は“みんなが安心して関われる会社であるための文化と仕組みの両立”です。郵便局、サントリー、そしてJALの事例も、制度整備だけでは不十分で、現場の意識と文化が追いついていないことを教えてくれます。これからの企業に求められるのは、透明性や説明責任だけでなく、それを支える“日常の行動・文化の刷新”です。
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