給付付き税額控除とは?低所得者支援の新しいカタチ
1. 給付付き税額控除とは?
「給付付き税額控除(英: Refundable Tax Credit)」とは、一定の所得以下の人に対して、税金を軽くするだけでなく、場合によっては“お金がもらえる”制度です。
✔ 通常の税額控除との違い
①控除後の税額が0円以下になったら?
・それ以上の控除はなし
・0円を下回った分が給付として支給される(還付される)
②例:課税額3万円、控除額5万円
・控除額は3万円まで有効、残り2万円は無効
・残り2万円が給付(還付)される
つまり、「税金を払っていない人」や「払っていてもごく少額な人」に対しても実質的な現金給付ができる仕組みなのです。
2. なぜ今、注目されているのか?
日本では、物価上昇(インフレ)や非正規雇用の増加によって、低所得層の生活がますます厳しくなっています。
しかし、現在の日本の税制や社会保障制度は、次のような課題を抱えています:
・現金給付の多くが「一時的」である(例:特別定額給付金など)
・所得の把握が正確でないと、適切な支援が難しい
・給付と課税の仕組みがバラバラで、非効率的
こうした中、「課税」と「給付」を一体化させた給付付き税額控除は、「確実に困っている人に支援を届ける仕組み」として注目を集めています。
3. 税額控除と給付付き税額控除の違いをさらに詳しく
通常の税額控除(例:扶養控除、住宅ローン控除など)
・納めるべき税金から一定額を差し引く
・ただし、もともと税金を納めていない人には恩恵がない
給付付き税額控除(例:米国のEITC)
・納税額を下回る場合でも差額を「還付」する
・給付の性格も持っており、「補助金」と「減税」の両方の効果を持つ
4. 給付付き税額控除のメリット・デメリット
✅ メリット
・低所得者への直接支援が可能(漏れにくい)
・働くインセンティブを維持(収入が増えても即支援が打ち切られない設計が可能)
・給付と課税が一体化 → 行政コストの削減
⚠ デメリット
・所得把握が正確でないと不公平が生じる
・給付詐欺や不正受給のリスク
・制度設計を誤ると**「働くほど損」現象(クラフ効果)**が発生する可能性
5. 世界の導入事例
アメリカ:EITC(Earned Income Tax Credit)
・1975年導入
・低所得の勤労者に対して給付金を支給
・毎年数千万人が利用し、子育て支援にも活用
イギリス:Working Tax Credit
・低所得の労働者に対して給付
・就業を促すための「インセンティブ設計」が特徴
6. 日本で導入されたらどうなる?
給付付き税額控除を日本で導入する場合、次のような変化が想定されます:
・所得税の申告が必要な人が増える(マイナンバーの活用もカギ)
・「働いているが苦しい」層への支援が強化される
・児童手当などの現行制度と組み合わせれば、より公平で持続的な福祉政策が可能
また、「ベーシックインカム」とは異なり、働く人を前提とした支援であるため、「自助努力を促す仕組み」として政治的にも受け入れられやすいと言われています。
7. まとめ:給付付き税額控除は“支援の新スタンダード”になるか?
給付付き税額控除は、ただの減税でも単なる給付でもない、「支援のハイブリッド型制度」です。
✔ 一定の収入を得ている人には減税効果を
✔ 税金を納めていない人にも現金給付を
という形で、より公平で効果的な所得再分配を実現できる可能性があります。
これからの日本社会において、限られた財源の中で「本当に必要な人に届く支援」をどう設計するか。その答えの1つとして、給付付き税額控除は今後ますます議論されていくでしょう。
0コメント