自筆証書遺言の検認とは?
~亡くなった方の「想い」を、正しく届けるための制度~
■ はじめに
「自分の死後、家族にこうしてほしい」と思い、遺言を書く方が増えています。特に「自筆証書遺言」は費用がかからず自分で簡単に書けるため、人気のある方法です。
しかし、自筆証書遺言にはひとつ大きなステップがあります。それが「家庭裁判所での検認」という手続きです。
■ 検認ってなに?
検認とは、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認する手続きです。民法1004条で定められており、「遺言の偽造・変造を防ぎ、原本を保全する」ことを目的としています。
※検認=遺言の有効性を認める手続きではありません。
たとえ検認を受けたとしても、遺言が法律的に無効な場合もあります。
■ 制度の意義と役割
検認は、次のような意義を持っています。
① トラブルを未然に防ぐ
遺言書が「本当に本人の書いたものか?」という疑念は相続人間で揉める原因になります。検認は、相続人全員に遺言の存在を知らせ、透明性を確保する役割があります。
② 遺言書の保全
開封される前に裁判所が検証することで、改ざんや隠匿を防ぎます。
■ 検認が必要なケース・不要なケース
・自筆証書遺言(通常): 必要
・自筆証書遺言(法務局保管制度を利用した場合):不要
・公正証書遺言:不要
・秘密証書遺言:必要
※令和2年7月から始まった「法務局の保管制度」を利用すると、検認は不要になります。
■ 手続きの流れ
①家庭裁判所に「検認申立書」を提出
→ 遺言書を保管している相続人が行います。
②裁判所が相続人全員に通知
③期日に家庭裁判所で開封・内容確認
④「検認済証明書」の交付を受ける
申立てに必要な書類:
・検認申立書
・亡くなった方の戸籍一式(出生~死亡まで)
・相続人全員の戸籍
・遺言書の原本
・収入印紙・郵便切手など
■ メリット・デメリット
◎ メリット
・自筆で簡単に書ける(手軽)
・費用がほとんどかからない
・書きたいときにすぐ書ける
△ デメリット(検認手続きも含めて)
・検認に時間がかかる(1~2ヶ月以上)
・相続人全員への通知が必要で手間
・開封してはいけない(無断開封は5万円以下の過料)
・内容が不備だと無効になる可能性がある
■ よくある注意点
・遺言書は勝手に開封してはいけない(必ず家庭裁判所へ)
・封筒に「遺言書在中」などと明記しておくと安心
・亡くなったことを知ったら速やかに検認申立てを
・内容の不備(たとえば日付が不明確)はトラブルの元
■ まとめ:検認は「亡き人の想い」を守る制度
自筆証書遺言はとても身近で便利な遺言方法です。
しかし、「書いたあと」も大切です。
検認は、故人の意志を大切に扱い、残された家族が揉めないようにするためのルールです。
ぜひ遺言書を作成したら、保管方法・検認手続き・相続人への配慮までを含めて考えてみてください。
「もめない相続」のために、今できる準備を進めましょう。
0コメント