日経が急騰しても安心できない理由
現状の要約
日経平均が急騰して「バブル再来だ」と言われるほどの上昇が起きている一方で、円安は続き物価上昇も止まらず、実体経済(雇用・賃金・中小企業の業績など)は必ずしも改善していない。株価と景気の乖離が大きく、単純に喜べない不均衡な状況にある。
なぜ株価だけ上がっているのか
・金融緩和と世界的な資金循環:国内外の資金余剰が株式に流入しやすい環境。低金利や利回り追求が株高を支える。
・為替動向の影響:円安は輸出大手の円換算利益や外貨建て資産評価を押し上げ、株価を押し上げる効果がある。
・市場構造の変化:大型成長株や特定銘柄への資金集中、ETFやパッシブ投資の拡大で指数が実体より早く動く。
・企業側の資本政策:自社株買い、配当改善、コスト削減でEPSを短期的に押し上げる会社が多い。
・期待の先行:AIや半導体など「テーマ」への期待が投機的に織り込まれるケース。
リスクと見えてくる脆弱性
・調整リスク(バブル崩壊):過熱が過度だと外的ショックや金利上昇で急落する恐れ。
・スタグフレーション的懸念:物価上昇が続き実質所得が伸びないまま景気停滞が続くと、消費マインドが冷え込み企業業績にも遅行して影響が出る。
・為替ショックの逆作用:円安による恩恵は一部企業に偏る。輸入依存の企業や家計の購買力は悪化する。
・格差拡大と金融市場の脆弱性:資産価格上昇の恩恵が資産保有者に偏ると内需は伸び悩み、長期的な成長力が削がれる。
・海外金利動向:米国などの金利上昇や景気変調はグローバルに波及しやすい。
個人が取るべき現実的な対処
資産運用の方針
・分散を最優先:国内株式一本に偏らない。海外株、債券、コモディティ、不動産(直接・REIT)、あるいはインフレ連動資産を組み合わせる。
・通貨分散と為替ヘッジ:円安リスクに備え、外貨建て資産を一定割合持つ; 必要ならヘッジ手段を検討する。
・流動性を確保:急落時に対応できる現預金や短期流動資産を残す。生活費6〜12ヶ月分を目安にするのが現実的。
・債券の扱いを再考:金利上昇局面では短期・中期限の債券や変動金利商品を検討。長期固定は価格変動リスクがある。
・投資スタンスの明確化:投機(短期)と投資(中長期)は切り分け、ポジションサイズと損失許容度を決める。
・税制・手数料を最適化:NISAやiDeCoなど税優遇制度を最大限活用し、手数料は低コストの商品を選ぶ。
生活・消費の対策
・実質所得の維持:家計を見直し、変動費の削減、固定費の見直し、サブスクや保険の再評価。
・エネルギー・食料などの価格上昇対策:長期契約や固定価格の利用、消費の工夫で負担を緩和。
・スキルとキャッシュフローの強化:副収入の確保、転職・スキルアップで賃金上昇や雇用リスクに備える。
・負債管理:変動金利の借入がある場合は金利上昇リスクを評価し、固定化や繰上返済を検討。
投資家・企業向けのより具体的アクションプラン
個人投資家のポートフォリオ例
・国内株式 25%(大型・配当・成長バランス)
・海外株式 30%(地域分散、成長セクター)
・債券 15%(短中期、インフレ連動含む)
・コモディティ/金 10%(インフレヘッジ)
・現金・短期資産 15%
・代替資産(不動産・REITなど) 5% ※ 年齢・目的で比率は調整する。
企業経営者向け短期戦術
・為替感応度の高いコスト構造を見直す(調達先多元化、円建て調達の検討)。
・価格転嫁戦略と顧客維持のバランスを取る。
・財務の健全化(流動性確保、借入条件の見直し)。
・投資判断は短期マクロに引きずられず長期の需給と競争優位を重視。
政策的に望ましい対応
・金融政策の段階的正常化:急激な政策変更は市場混乱を招くため、透明性あるコミュニケーションを伴った段階的な調整が望ましい。
・賃金と生産性の同時改善:賃上げが物価上昇以上で定着する仕組みづくり(生産性向上投資、労働市場政策)。
・社会的セーフティネット強化:物価上昇で打撃を受ける世帯への標的支援。
・構造改革と投資促進:中小企業支援、デジタル化・脱炭素投資の促進で実体経済の底上げ。
最後に:心構えと行動優先順位
・冷静さを保つ:市場の急騰は必ずしも実体経済の改善を意味しない。感情的な追随はリスクを高める。
・長期視点と短期対応の両立:長期の資産形成方針を持ちながら、短期のリスク管理(流動性、ヘッジ)を怠らない。
・自分ごと化する:家計、投資、キャリアそれぞれで「最悪シナリオ」を想定し、具体的な対応策を決めておく。
0コメント